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モルモットの入浴(お風呂)完全ガイド|頻度・温度・乾かし方・NG例

「モルモットはお風呂に入れない方がいい」と聞いたことがある方も多いでしょう。インターネットで調べると、「絶対に入れてはいけない」という情報もあれば、「定期的に洗いましょう」という情報もあり、混乱するかもしれません。
確かに、水に濡れることは体温の低下やストレスの原因になるため、むやみに行うのは望ましくありません。
けれど実際には、状況を見て上手に行えば、とても良い効果をもたらすケアでもあります。

たとえば、約250頭を飼育する動物園では、個体の健康状態や季節に応じて、必要なときに部分的な洗浄を行うことがあります。
お尻周りの汚れや皮膚トラブルの予防、被毛の健康維持などに効果があり、清潔な環境づくりにもつながっています。

つまり大切なのは、「お風呂に入れる・入れない」の二択ではなく、「どんな時に、どう入れるか」です。
ここでは、入浴の適切な頻度、準備から手順、乾かし方、ドライヤーの安全距離などを、実際の飼育現場と獣医師の助言に基づきやさしく解説します。

💡この記事でわかること
  • お風呂は「必要時のみ」が原則である理由と、その具体的なタイミングの見極め方がわかる
  • いきなり洗うのではなく、まず試すべき「蒸しタオルでの拭き取り」という、体に負担の少ないケア方法が学べる
  • 準備から、洗い方、すすぎ方、乾かし方まで、モルモットを怖がらせず安全に行うための全手順がわかる
  • 家庭用ドライヤーの危険性など、乾かす際に特に注意すべき点と、安全な乾かし方の選択肢が理解できる
  • 入浴が、皮膚トラブルなどを見つける絶好の健康チェックの機会になることがわかる
目次

入浴の準備と判断基準

まずは軽い汚れは拭いてみる

尿や柔らかい便などで毛が湿ってしまっている場合は、「拭き取り」が有効です。

  • 清潔なタオルや厚手のキッチンペーパーを、人肌より少し熱めのお湯(約40℃)に浸し固く絞ります。(水滴が滴らないくらいが目安)
  • その蒸しタオルで汚れた部分を「毛を摘まむように」優しく拭います。ゴシゴシ擦るのではなく、汚れをタオルに移し取るイメージです。
  • 最後に、乾いたタオルで同じ場所を優しく押さえて、湿り気を取り除きます。

この方法は、体の冷えを最小限に抑えつつ、皮脂汚れや尿の汚れを効果的に浮かせて落とすことができます。多くの場合、このステップまでで十分きれいになります。

入浴前の健康チェック

入浴は体力を使うため、体調の悪い子には大きな負担になります。
次の項目を確認してから行いましょう。

  • 食欲があるか
  • 体が冷たくないか
  • 下痢やくしゃみがないか
  • 足の裏に赤みや傷がないか

これらのいずれかに異常があれば、入浴は避け、まず動物病院に相談してください。

お風呂に入れるタイミング

まず、日常的に「定期的に入れる」という必要はありません。
モルモットは本来とても清潔好きで、自分で毛づくろいをして体をきれいに保つ動物です。
ただし、次のような状態のときは、お風呂を検討してもよいサインです。

  • お尻やお腹の毛に尿やうんちがこびりついている
  • 体臭が強くなり、皮脂や汚れが目立つ
  • フケやかゆみなど、皮膚トラブルの兆候が見られる
  • 獣医師から洗浄を指示された場合
ケア内容方法頻度の目安
軽い汚れ蒸しタオル拭き必要時(週1〜2回)
お尻の汚れ・皮膚汚れ部分洗い月1〜2回以内
全身洗い37〜38℃のぬるま湯で短時間年数回以下(必要時のみ)
乾燥タオル+サーキュレーター/自然乾燥室温25〜28℃で監視下

逆に、次のようなときは避けましょう。

  • 妊娠中・授乳中
  • 体調不良(食欲低下、元気がない、体が冷たい)
  • 高齢個体や回復期のモルモット

専門家の助言
モルモットの皮膚は非常に薄く、皮脂が少ないため、頻繁な洗浄は皮膚炎や乾燥の原因になります。
健康な個体であれば、全身洗いは年に数回以下で十分です。
それよりも、毎日のケージ清掃・ブラッシング・部分拭きで清潔を維持する方が、はるかに安全で快適です。

ポイント
「汚れている=すぐ洗う」ではなく、まずは濡らしたタオルで部分拭きから試してみましょう。
全身を濡らすのは最後の手段。モルモットの体調を最優先に考えてください。

家庭でもできる安全な洗い方

Step 1:準備を整える

モルモットをお風呂に入れるときは、「手早く」「静かに」「暖かい環境で」が基本です。
以下の道具を事前にすべて用意しておきましょう。

  • 洗面器(または小さめの桶。深すぎないもの)
  • ぬるま湯(37℃〜38℃。人肌よりややぬるめ)
  • 低刺激の小動物用シャンプー(または無香料・低刺激・ノンリンスタイプ)
  • 乾いたタオルを2〜3枚
  • ペーパータオル(拭き取り補助用)
  • ドライヤー(家庭用の場合は50cm以上離して使用)または静音サーキュレーター
  • 室温25〜28℃前後の暖かい場所

温度の目安
手の甲で触って「少しぬるい」と感じる程度が最適です。
熱すぎるお湯は皮膚を乾燥させ、冷たい水は体温を下げる原因になります。

Step 2:足からゆっくり慣らす

洗面器に浅くぬるま湯を張り、後ろ足が底につく程度の深さにします。
モルモットの上半身を支えながら、足→お尻→お腹の順にゆっくりお湯に慣らしていきましょう。
後ろ足が底についているとモルモットは安心します。

顔や耳、頭にはお湯をかけないようにし、水しぶきを立てず静かに行うことが大切です。
もし不安が強い子であれば、最初の1〜2回は「足湯だけ」でも構いません。

ポイント
飼い主の声はモルモットに安心を与えます。
「大丈夫だよ」「きれいにしようね」とやさしく声をかけながら行うことで、
驚きや不安を大幅に減らすことができます。

Step 3:やさしく洗う

汚れが強い部分だけに、薄めた小動物用シャンプーを使用します。
手のひらで泡立てるのは構いませんが、泡立てすぎには注意してください。
モルモットの皮膚は人間よりも薄く皮脂量が少ないため、濃い泡で洗うと皮脂を落としすぎて乾燥を招きます。

泡をしっかり作るというよりは、「軽くなでて汚れを浮かせる」ような感覚で十分です。
必要に応じてペーパータオルをぬるま湯に浸して絞り、部分洗浄にも使えます。

現場でのコツ
動物園でも、“もこもこの泡洗い”ではなく、“ぬるま湯に溶かした泡でマッサージする”方法が採用されています。
皮膚に残留させないため、泡が少ない=安全で丁寧な洗い方です。

Step 4:しっかりすすぐ

シャンプーが残ると、皮膚のかゆみや炎症の原因になります。
新しいぬるま湯を用意して、手ですくうようにして泡を流してあげましょう。
背中からシャワーのように勢いよくかけるのではなく、お尻や足元から静かにすすぐのがコツです。

泡が残っていないかを確認する際は、タオルで軽く押さえてみて、ヌルつきがなくなればOKです。

プロから教わった観察ポイント
・すすぎの時間は「洗いより長く」
・体温が下がらないように手早く
・お湯が冷めたら途中で交換する
この3点を意識するだけで、仕上がりが格段に良くなります。

Step 5:やさしく拭いて水気を取る

洗い終わったら、すぐに体を乾かすことが大切です。
まずはタオルを広げてモルモットを包み、押さえるようにして水分を吸い取ります
こすったり、強く拭いたりすると毛が切れたり皮膚が赤くなることがあるため、必ず「押さえるだけ」。こすらないこと。

タオルを2〜3回取り替えながら、できる限り水分をタオルドライで吸い取ります。
ペーパータオルを併用すると、細かい部分(耳の後ろや足の間)の水気も取りやすく衛生的です。

Step 6:乾かし方の選択(自然乾燥と温風の比較)

モルモットは強い風や音を苦手とします。
特に家庭用ドライヤーの「低温モード」であっても、吹き出し口の局所温度が70℃以上になることがあり、
知らないうちに皮膚の一部を熱傷させてしまうリスクがあります。

そのため、乾かし方は個体の性格と環境に応じて使い分けるのが理想です。

自然乾燥と日向ぼっこ(拭き取り+天日干し)

  • モルモットにストレスを与えにくく、落ち着いて乾かせる。
  • タオルで十分に水分を取り、25〜28℃の暖かい室内で自然乾燥を行う。
  • 春や秋の穏やかな日に、半日陰で5分程度の短時間天日干しを行うのも良い刺激になります。

短時間の日光浴は血行促進やビタミンD合成を助けますが、殺菌目的ではなく健康維持の一環と考えてください。
これは大規模な動物園でも日常的に行われている方法で、日光浴によって皮膚が清潔に保たれる効果があります。


ただし、真夏の直射日光や冬の寒風は厳禁。
いつでも日陰に入れる場所を確保し、監視下で短時間のみ行ってください。

動物園の基準
・外気温:20〜25℃
・床面温度:28℃未満
・時間:5〜10分
・強い直射日光は避け、半日陰や木漏れ日程度の光が最適

温風乾燥(家庭用・業務用ドライヤー)

お風呂の後は、できるだけ早く体を乾かして体温を保つことが大切です。
モルモットは強い風や音を怖がる子が多いため、ドライヤーの使い方には少し工夫が必要です。

まず、基本はタオルドライでしっかり水気を取ること
毛の根元まで乾いたタオルで優しく押さえながら水分を吸い取るだけで、
乾燥にかかる時間は大幅に短縮できます。

その上で、どうしても乾ききらない場合や寒い時期には、
家庭用ドライヤーを安全に使う工夫を取り入れましょう。

  • 家庭用ドライヤーは温度が高く、風量が少ないため慎重に使用して下さい。
  • 特に小型個体では、吹き出し口の近くに「高温スポット」が生じ、知らぬ間に低温やけどを起こすケースもあります。
  • どうしても使う場合は、最低でも50cm以上離し、手の甲で温度を常に確認しながら、冷風と温風を交互に使用します。風を直接体に当てず、手で風向きを分散させながら短時間で仕上げましょう。
  • 可能であれば、ペットサロンで使用されるような業務用吊り下げ式ドライヤー(風量が強く低温分散型)を使用すると安全です。

入浴後のケアと観察

完全に乾いた後は、やわらかいブラシで被毛を整えます。
このとき、皮膚に赤み・かゆみ・湿り気がないかを確認してください。

また、お風呂の直後は体力を消耗しています。
ケージに戻した後は静かな環境で休ませ、すぐに牧草や水を与えず、体温が安定してからにすると安全です。

観察ポイント
・体を小刻みに震わせていないか
・鼻や口のまわりが濡れていないか
・目を細めてじっとしている場合は体温が下がっている可能性あり

もし不安が残る場合は、体を覆うようにタオルをかけて保温し、
体が自然に温まってから給餌・給水を再開します。

耳・陰部・肛門周囲のケア

耳の中や陰部、肛門周囲は特にデリケートです。
耳の中に水が入ると外耳炎の原因になります。
洗う際は外側を軽く拭く程度にとどめ、綿棒は使用しないでください。

陰部・肛門周囲は、ぬるま湯で湿らせたペーパーで優しく拭き取るだけで十分です。
強く擦ると炎症を起こすことがあります。

冬季や寒冷期の注意点

冬季は室温を26〜28℃、湿度を50〜60%程度に保ち、入浴後は必ず完全に乾かしてからケージに戻します。
乾燥した冷たい空気や床面が体温を奪うため、乾燥後15分ほどはひざの上やタオルの上で保温すると安心です。

複数匹飼育時の注意

複数飼育の場合、洗った直後は他の個体に匂いが変わったと認識され、追い回しや威嚇が起こることがあります。
戻す前に、使用していた寝藁を少し体に擦り付けて匂いを戻すと安全です。再同居後は15〜30分ほど観察し、威嚇や鳴き声が強い場合は一時的に仕切って落ち着かせます。

洗浄後の水分補給

入浴後は軽い脱水状態になることがあります。
体温が安定してから、常温の水を与えてください。
冷たい水や給水ノズルの詰まりがないかも確認しましょう。

お風呂は健康チェックのチャンス

モルモットにとってお風呂は「清潔を保つため」だけでなく、皮膚や被毛の状態を観察する良いタイミングです。
次のような症状がある場合は、入浴よりもまず動物病院での診察が必要です。

  • フケが多い・黒い粒状の汚れ(ダニや真菌の可能性)
  • 皮膚の赤み・かゆみ・脱毛
  • 酸っぱい・カビのような体臭

これらは真菌症や外部寄生虫症の可能性があり、シャンプーでは治りません。

まとめ(家庭へのアドバイス)

モルモットにとって「お風呂」は、健康を守るための“ケアのひとつ”です。
ただし、頻繁に行う必要はなく、体調を見ながら慎重に。

軽い汚れなら蒸しタオルで拭くだけで十分きれいになります。
どうしても汚れが取れない場合は、37〜38℃のぬるま湯で短時間の部分洗いをし、しっかり拭き取って温かい部屋でゆっくり乾かしましょう。

洗い終えた後は、少し離れたところから優しく風を送って乾かすか、暖かい部屋で自然乾燥させます。
「きれいにすること」よりも「冷やさないこと」「怖がらせないこと」が、何より大切です。

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