MENU

四季の飼育ポイント|温度・湿度管理と季節ごとの注意点

モルモットは、もともと南米アンデスの涼しくて乾燥した高原で暮らしてきた動物です。
だから急な温度・湿度の変化が苦手。日本の四季では、暑さ・寒さ・乾燥・多湿が次々とやってきます。
大切なのは、「いつでも、少しだけ快適な場所が選べる」ようにしてあげること。
このガイドでは、年間の基本設定→春夏秋冬の対策の順に、具体的な数値と道具、手順をお伝えします。

💡 この記事でわかること
  • モルモットが一年中快適に過ごせる理想的な温度と湿度の具体的な数値がわかる
  • の「寒暖差」、の「肥満予防」など、季節の変わり目に特に注意すべき点がわかる
  • 命に直結する熱中症対策として、エアコンの適切な使い方や冷却グッズの活用法が学べる
  • 厳しいを乗り切るための、ペットヒーターを使った具体的な保温対策と、暖房による乾燥対策がわかる
  • 日本の四季の変化に対応し、モルモットの心と体の健康を守るための、年間の飼育計画を立てられるようになる
目次

モルモットが快適な温度と湿度

年間の基本設定(まずはここから)

季節ごとの対策を始める前に、まずは一年を通して守ってあげたい基本の環境についてお話しします。この土台がしっかりしていれば、季節の変化にも慌てず対応できます。

  • 快適な温度は「18~24℃」
    • 人間が「少し涼しいかな?」と感じるくらいがベストです。26℃を超えると少し注意が必要、28℃以上は熱中症のリスクが高まる「赤信号」と覚えておきましょう。
      特にお迎えしたばかりの小さな子やシニアのモルモット、病気の治療中の子はこの温度変化にさらに敏感です。より一層、気を配ってあげましょう。
  • 心地よい湿度は「40~60%」
    • ジメジメする夏は除湿を、空気が乾燥する冬は加湿を心がけ、この範囲をキープしてあげましょう。
  • 温度計と湿度計は「2つ」用意
    • 部屋全体を管理するエアコンの設定温度と、モルモットが実際に生活しているケージの中の温度は意外と違うものです。特に暖かい空気は上に、冷たい空気は下に溜まる性質があります。
    • 部屋全体とモルモットが過ごすケージ内の両方に設置するのがおすすめです。特にケージの床に近い高さの温度は重要です。可能なら一日の温度変化がわかる記録機能付きのものだと留守中の環境も把握できて安心です。
      1つ目:お部屋の壁など、人間の目線の高さに。
      2つ目:ケージの中、床材から5~10cmくらいの高さに。
      (齧られないように設置してください)
  • ケージの中に「選べる3つのゾーン」を
    • これが一番大切なポイントです。ケージの中に、
      ①暖かい場所(ペットヒーターなどを片面に)
      ②涼しい場所(夏は冷却プレートなどを片面に)
      ③何もない普通の場所、という3つのエリアを作ってあげましょう。
      こうすることで、モルモットは「ちょっと肌寒いな」と感じたらヒーターのそばへ、「少し暑いな」と感じたらプレートの上へ、「今はちょうどいいや」と思ったら真ん中へ、と自分で移動して体温調節をすることができます。この「逃げ場」がある安心感が、彼らのストレスを大きく減らしてくれるのです。
  • 週に一度の「5分でできる健康チェック」
    • 週末などに時間を決めて、体重、うんちの数や大きさ、ごはんの食べっぷり、お水の飲み具合などをメモする習慣をつけましょう。小さな変化に気づくことが、病気の早期発見につながります。

週に一度の「5分でできる健康チェック」

週末などに時間を決めて、体重、うんちの数や大きさ、ごはんの食べっぷり、お水の飲み具合などをメモする習慣をつけましょう。小さな変化に気づくことが、病気の早期発見につながります。

  1. 体重測定:急な増加は肥満、急な減少は病気のサインかも。毎週同じタイミングで測りましょう。
  2. うんちのチェック:数は?大きさは?形は?いつもより小さい、少ない、形が歪、下痢をしている、などの変化は消化器系の不調のサインです。
  3. ごはんの食べっぷり:牧草やペレットをいつも通り食べているか。大好物を見せても反応が薄いときは要注意。
  4. お水の飲み具合:給水ボトルのメモリで、昨日からどれくらい減ったか確認しましょう。飲む量が極端に増えたり減ったりしていませんか?
  5. おしっこの色:白く濁っていたり、赤っぽかったりしませんか?(正常でもカルシウム尿で白く濁ることはあります)
  6. 全身のチェック:抱っこしたついでに、目ヤニや鼻水は出ていないか、毛並みはいつも通りか、お腹や手足にしこりはないか、などを優しく撫でながら確認しましょう。

春の対策:寒暖差と換毛期、日光浴の注意点

過ごしやすい季節ですが、昼夜の寒暖差が激しい時期でもあります。人間が「今日は何を着よう?」と迷うような寒暖差は、体温調節が得意ではない小さなモルモットには大きな負担になります。

寒暖差に負けないための、やさしい工夫

  1. ヒーターはまだしまわないで 日中の気温が20℃を超えるようになっても、朝晩は15℃以下に冷え込むことがあります。この「日内±5℃以上の変化」が、自律神経のバランスを崩し、体調を崩すきっかけになりやすいのです。5月頃までは、夜間や明け方の冷え込みに備えて、ペットヒーターは一番低い設定で稼働させておくと安心です。ケージの半面のみを保温して、暑いと感じたらモルモットが自分で離れられるようにしておきます。
  2. ケージの覆い方にもひと工夫:夜、冷え込み対策でケージを毛布などで覆う場合、全面をぴったり覆ってしまうと空気がこもり、温度や湿度が上がりすぎてしまうことがあります。ケージを覆う際は、上からの覆いは一部だけにして通気性を確保します。
  3. 日光浴のリスク管理: 直射日光は熱中症を引き起こすため避けてください。風通しが確保された半日陰の環境で、短時間にとどめてください。
  4. ガラス越しの光では意味がない?:骨の健康に必要なビタミンDを作るためには「UVB」という紫外線が必要です。しかし、UVBはほとんどのガラスを通り抜けることができません。窓際は温室のように温度が急上昇しやすく、危険性があります。
  5. 野草給餌の注意点: 安全性が確認された場所で採取したもの以外は避けるのが賢明です。農薬、除草剤、犬猫尿、寄生虫等のリスクを考慮し、提供する場合は少量かつよく洗うを徹底してください。安全な場所のみで採取して、無理はしないが鉄則です。
  6. 換毛期対策: 定期的なブラッシングと清掃により、抜け毛の誤嚥リスクを低減します。被毛の摂取は消化管の蠕動運動を阻害する可能性があるため、食欲と排便状態の観察を強化してください。

夏の対策:高温多湿は命に関わる

夏の対策:高温多湿は命に関わる
モルモットにとって日本の夏は一年で最も過酷な季節です。熱中症は命に直結するため、対策は万全に行いましょう。私たちの「これくらい大丈夫だろう」という油断は禁物です。

なぜモルモットは暑さに弱いのか

その理由は、彼らの体のつくりにあります。

  • 汗をかけない:私たち人間は、汗をかくことで気化熱を利用して体温を下げます。しかし、モルモットの体には、体温調節の役割を果たす汗腺がほとんどありません。つまり、体の中に熱がこもりやすいのです。
  • もふもふの毛皮:彼らの密集した毛皮は、冬の寒さから身を守るのには適していますが、日本の夏の高温多湿な環境では、熱を逃がす妨げになってしまいます。

このため、高温多湿な環境に置かれると、自分の力で体温を下げることが非常に難しく、あっという間に熱中症になってしまうのです。

夏の温湿度管理は「命の管理」

  • 温度: 温度設定は24~26℃を目標に。室温が28℃を超えるようなら、エアコンを24時間稼働させましょう。
  • 湿度:湿度は40~55%を目標にしましょう。湿度が高いと熱中症のリスクがさらに高まります。

エアコンの賢い使い方

  • 直風を避ける: エアコンや扇風機の冷たい風が直接体に当たり続けると、体温を奪われすぎて体調を崩す原因になります。風向きを調整しケージには直接風が当たらないように工夫しましょう。サーキュレーターを使って部屋全体の空気を優しく循環させるのも効果的です。
  • エアコンは連続運転:電気代が気になるところですが、「外出時にOFF、帰宅時にON」という使い方は、急激な温度変化を生み出し、モルモットの体に大きなストレスを与えます。特に真夏は短時間の外出でも室内温度はあっという間に危険なレベルまで上昇します。一定の温度を保つためにも連続運転が理想です。その方が実は電気代も安く済むこともあると聞きます。
  • 冷却グッズとの併用: アルミプレートや大理石のボードを片側だけ置いたり、凍らせたペットボトルをタオルで巻いてケージの外側に置くのも効果的です。これにより、モルモットが自分で涼しい場所を選べるようになります。

ひんやり快適!冷却グッズの上手な活用法

エアコン管理を基本としながら、補助的に冷却グッズを取り入れると、モルモットが自分で涼しい場所を選べるようになり、さらに快適に過ごせます。

  • 外出時の工夫: 原則、冷房は切らないで連続運転(短時間でも室温は急上昇します)をします。短時間の外出で冷房を切る際は、凍らせたペットボトルをタオルで巻いたものや保冷剤をケージの近くに置くことで、簡易的なクーラーとして活用できます。モルモットが直接触れて体を冷やしすぎないよう、必ずタオルで巻くなどの工夫をしてください。
  • 冷却グッズの活用: アルミプレートや大理石のボードをケージの1/3~半面を目安に設置します。アルミ製のプレートと大理石のプレートを試したところ、実際に多くのモルモットは暑い日にはこれらの上で体を冷やし、気持ちよさそうに涼む姿が見られました。
  • 凍らせたペットボトル:タオルでしっかり巻き水滴でケージ内が濡れないように注意しながら、ケージの外側に接するように置きます。モルモットが直接触れて体を冷やしすぎないように、必ずケージの外から当ててあげてください。

夏バテを防ぐ、衛生・食事管理

高温多湿の夏は食べ物が傷みやすく、細菌も繁殖しやすい季節です。

  • 衛生・食事管理: 夏は食べ物が傷みやすく、細菌も繁殖しがちです。生の野菜や果物は食べ残したらすぐに片付け、水の交換も1日に2回以上行いましょう。給水ボトルのノズルも毎日きれいに洗いましょう。
  • ビタミンCをしっかり補給:夏バテ気味で食欲が落ちると、ビタミンCが不足しがちになります。モルモットは体内でビタミンCを作れないため、食事から摂取する必要があります。ペレットはビタミンCが添加されていますが、熱や光で壊れやすいので、涼しくて暗い場所で保管してください。

もしも熱中症になってしまったら

熱中症は時間との勝負です。初期サインを見逃さず、迅速に対応することが重要です。

  • 熱中症のサイン
    • ぐったりして動かない
    • 呼吸が速く、浅い(パンティング)
    • よだれをたくさん垂らす
    • 体が熱い
    • ふらつく、けいれんする
  • 緊急時の応急処置
    1. すぐに涼しい場所へ:エアコンの効いた涼しい部屋に移動させます。
    2. 体を冷やす:濡らしたタオルやガーゼで体を優しく包みます。耳や足の裏を冷やすのも効果的です。ただし、氷水などの冷たすぎる水は血管が収縮し、かえって危険なので絶対に使用しないでください。
    3. すぐに動物病院へ連絡:応急処置をしながら、すぐに診察してくれる動物病院を探して電話をしてください。応急処置で少し元気になったように見えても、内臓にダメージを負っている可能性があります。必ず獣医師の診察を受けてください。

秋の対策:肥満予防と冬支度

モルモットにとって春と同様に過ごしやすい季節ですが、肥満になりやすい時期でもありますし、「急な冷え込み」に注意が必要です。また、冬に向けた準備期間でもあります。

1) 食べ過ぎ注意、でも牧草は“たくさん”

  • 太りやすい季節です。牧草を主食とし、ペレットは総量の目安10%に抑えます。
  • 体重の短期間の増加は運動不足のサイン。

2) 乾燥と多湿の振れ

秋は長雨が続いてジメジメする日もあれば、急に空気が乾燥して晴れ渡る日もあります。この湿度の大きな変動もモルモットの呼吸器には負担になります。

  • 湿度計を見て臨機応変に:長雨による多湿、晴天日の乾燥など湿度の変動が大きくなります。湿度計に基づき除湿と加湿を適宜切り替えてください。雨の日は除湿、晴れた乾燥日は加湿。40~60%の帯を外さない工夫を。
  • 加湿器は清掃を忘れないで:久しぶりに加湿器を使う際は必ず内部をきれいに掃除してから使い始めてください。汚れたフィルターやタンク内部でカビや雑菌が繁殖し、それを部屋中に撒き散らしてしまうと人間だけでなくモルモットの呼吸器疾患の原因になってしまいます。

3) 冬支度は11月初旬まで

「まだ暖かいから大丈夫」と思っていると、急に冬将軍がやってきて慌てることになります。紅葉が色づき始める頃には、冬支度を始めましょう。

  • ヒーターの試運転:夏の間しまっていたペットヒーターがちゃんと暖まるか、11月初旬までにはヒーター試運転を完了させ、コードに傷がないかなどを確認しておきましょう。
  • コードのかじり対策は万全に:モルモットは何でもかじってしまう好奇心旺盛な生き物です。ヒーターのコードは必ず齧り保護チューブ(スパイラルカバー)で全体を覆ってください。感電事故を防ぐためのとても大切な一手間です。
  • ケージの断熱準備:ケージの周りを囲うための段ボールや断熱シート、毛布などを準備しておきましょう。ただし断熱は三面+天面の一部開口で空気の通り道を確保して結露を防止します。

4) 換毛と掃除

  • 春同様、こまめなブラッシングをして抜け毛は吸い取ります。空気清浄機があると家族のアレルギー予防にも有効です。

冬の対策:乾燥と低温に備える

モルモットの故郷アンデスも寒い地域ではありますが、日本の冬は「底冷え」と「乾燥」というまた違った厳しさがあります。

冬の温湿度管理の目標値

  • 温湿:18~22℃を維持しましょう。特に、15℃を下回らないように注意が必要です。
  • 湿度:40~60%を維持します。暖房を使うと空気はどんどん乾燥します。
  • 冷たい空気は床に溜まる:ケージを床に直接置いていると、床からの冷気で体が冷えてしまいます。すのこや断熱マットを敷いたり、低い台に乗せたりして床から5~10cmほど高さを確保してあげるだけで体感温度はかなり変わります。また、窓際は外の冷気が伝わりやすい(コールドドラフト)ので窓から離れた場所にケージを置いてあげましょう。

ヒーターの安全で効果的な使い方

  • 「半分だけ」 ケージの床面の半分だけを温め、「ぽかぽかゾーン」と「いつも通りゾーン」を作ってあげます。こうすることで、モルモットが「ちょっと暑いな」と感じた時に、自分で涼しい方へ移動できます。全面を温めてしまうと、熱くなりすぎた時の逃げ場がなくなり、かえって危険です。
  • サーモスタットで自動管理:ペットヒーターに接続できる「サーモスタット」という温度を自動で管理してくれる機器を使うと、設定した温度以上になると自動で電源がOFFになり、下がるとONになるため、温度の上がりすぎを防ぎ、安全性も高まるのでおすすめです。
  • やけどに注意:火災や火傷のリスクがある暖房器具(ストーブ等)を直近に置くことは避けてください。遠赤外線・パネルヒーターが扱いやすいです。直射熱・直近置き・裸火はNGです。ストーブや赤外線ヒーターは直視線上に置かないこと。
  • 乾燥対策: 加湿器の使用を基本とし、1~2時間ごとに短時間の換気を行い、新鮮な空気を取り入れます。湿度40~60%を維持します。これにより、湿度を保ちつつ結露やカビの発生を抑制します。
  • 低体温の兆候: 体を丸めて動かない、食欲不振などのサインが見られたら、急激に温めるのではなく、まず部屋全体を暖め、穏やかに体温が回復するよう促してください。改善しない場合は獣医を受診してください

冬の危険なサイン「低体温症」

体が冷えすぎて、正常な体温を維持できなくなってしまう状態です。高齢の子や病気の子は特になりやすいので注意が必要です。

  • 低体温のサイン
    • 体の震え
    • 体を小さく丸めて、じっと動かない
    • 食欲がない
    • 触ると体がいつもより冷たい
  • もしも「おかしいな」と思ったら
    • 急激に温めるのはNGです。カイロなどで直接温めると、体の表面だけが温まり、かえって危険な状態になることがあります。
    • まずは部屋全体を22~24℃くらいまでゆっくりと暖めましょう。
    • フリースや毛布でそっと体を包んであげるのも良いでしょう。
    • 少し動けるようになったら、ブドウ糖やモルモット用の栄養補助食などを少量与えてエネルギーを補給させてあげるのも有効ですが、まずは保温を優先してください。
    • 状態が改善しない場合は、様子を見ずにすぐに動物病院へ連れて行ってあげてください。

迷ったら「数字」と「逃げ場」に戻る

もし迷ったり、困ったりしたら、この2つの基本に立ち返ってください。

① 守るべき「数字」

  • 温度:18~24℃ (夏は26℃で警戒、28℃は赤信号!)
  • 湿度:40~60%

この数字を、お部屋とケージ内の2つの温湿度計で毎日チェックする。ただこれだけで、多くのトラブルは未然に防げます。

② 作ってあげる「逃げ場」

  • ケージの中に、暖かい場所・涼しい場所・普通の場所の3ゾーンを作る。

モルモット自身に「選ばせてあげる」環境。これが、彼らのストレスを減らし、健やかな暮らしを守る一番の秘訣です。

わが家の「続けられる仕組み」を見つけよう

大切なのは“完璧”よりも“続けられる仕組み”をあなたの家のつくりや、ご家族の生活リズムに合わせて作っていくことです。

例えば朝晩の給水ボトルのノズルを指で押して水が出るか確認する「指押しチェック」をご夫婦のどちらかが必ずやる、という簡単なルールを作る。週末の体重測定をご主人、毎日の野菜の準備を奥様、というように分担する。

  • 点検:温湿度二点計測週1の健康メモ(体重・便・食べ方・飲水)。
  • 家族ルール:朝晩の給水ボトル“指押しチェック”を誰かが必ずやる

そんな小さな工夫の積み重ねがモルモットの命を守る大きな力になります。

目次