野生では群れで暮らしていたモルモットは、多頭飼いが可能な動物です。複数で仲良く過ごす姿は非常に愛らしく、飼い主さんが留守の時でも寂しい思いをさせずに済みます。しかし、安易に頭数を増やすと、相性の問題や縄張り争いから喧嘩に発展し、大きなストレスや怪我につながることも。この記事では、多頭飼いを成功させるための心構え、相性の良い組み合わせ、そしてトラブルを防ぐための具体的な手順を詳しく解説します。
- 多頭飼いで最も平和に過ごしやすい性別の組み合わせと、注意が必要な組み合わせがわかる
- 新しい子をお迎えする際の、安全で失敗の少ない対面のさせ方が具体的なステップで学べる
- 縄張り争いやケンカの危険なサインを見分け、いつ、どのように対処すべきかがわかる
- 1頭飼いとは異なる責任、費用、飼育スペースなど、多頭飼いを始める前に必要な心構えが理解できる
- 相性の良いパートナーを見つけ、モルモットたちの社会的な生活を豊かにするためのコツがわかる
【心構え編】多頭飼いを始める前に
1頭飼いとは異なり、多頭飼いにはより高度な飼育スキルと覚悟が求められます。
複数の命を預かることは、責任も手間も増えることを理解しましょう。十分な飼育スペース、増加する食費や医療費、そして1頭1頭に愛情を注ぐ時間を確保できるか、よく計画することが大切です。
- 知識と観察力: 複数の子が同じケージにいる時、1頭が体調を崩しても気づきにくいものです。病気の個体をいち早く特定し、適切に隔離・対処できますか?
- 時間と手間: 頭数が増えれば、掃除の手間も排泄物の量も倍増します。1頭1頭の健康チェックやケアの時間を確保できますか?
- スペースと費用: 成長後、相性が悪ければケージを分ける必要があります。頭数分のケージを置くスペースと、将来にわたる食費や医療費を準備できていますか?
初心者の方や、これらの確保が難しい場合は、まず1頭飼いでじっくり向き合うことをお勧めします。
相性の良い組み合わせ
モルモットには縄張り意識と社会的な順位(上下関係)があります。これを踏まえ、比較的平和に過ごしやすい組み合わせを選びましょう。
- 【最もおすすめ】メス同士
モルモットは基本的に群れで生活する社会性のある動物ですが、その中でもメス同士は最も平和に共存しやすい組み合わせです。生まれたときから一緒にいる姉妹であれば、最も平和に過ごせる組み合わせです。後から新しいメスを迎える場合でも、相性を見極め、時間をかけて慣らせば比較的仲良くなりやすいとされています。 - 【注意が必要】オス同士
オスは縄張り意識と序列の優劣の争いが激しく、特に成長したオス同士は激しく喧嘩をする可能性が非常に高い組み合わせです。喧嘩が始まると大怪我や致命傷につながることもあります。血縁関係のある兄弟で、幼い頃から一緒であればうまくいく場合もありますが、基本的には避けるのが賢明です。 - 【計画的に】オスとメス(複数)
繁殖を望む場合の組み合わせですが、モルモットは繁殖力が非常に高いため、無計画な繁殖は絶対に避けましょう。オス1頭に対しメスが複数というハーレム状態は可能ですが、オスを2頭以上同じケージに入れるのは激しい争いの原因となるため禁忌です。
【実践編】新しい子のお迎えの進め方
いきなり同じケージに入れるのは絶対にやめましょう。お互いにとって大きなストレスとなり、怪我の原因になります。
ステップ1:隔離と健康チェック(1~2週間)
新しい子をお迎えしたら、まずは別のケージに入れ、1~2週間は完全に隔離します。 これは病気の有無を確認する(検疫)ための最も重要な期間です。この間に、以下の点をじっくり観察しましょう。
- 病気の兆候はないか?: 下痢をしていないか、皮膚は綺麗か、ダニなどはいないか。
- 妊娠していないか?: メスの場合、ペットショップでオスと一緒だった可能性があります。
- 性別は間違いないか?: 幼いと見分けが難しいことがあります。再度確認しましょう。
- どんな餌を食べていたか?: 元の環境と同じ餌を用意すると、スムーズに食事ができます。
ステップ2:ケージ越しのお見合い
隔離期間が終わったら、ケージを隣同士に置き、お互いの匂いや存在に慣れさせます。柵越しに鼻をくっつけて挨拶するようなら良い兆候です。
ステップ3:中立的な場所での対面
ケージの外の広い部屋などで、短い時間だけ一緒に遊ばせてみましょう。追いかけ回したり、威嚇したりしないか、注意深く観察します。
ステップ4:同居と観察
何度か対面を繰り返し、問題がなければ同じケージでの同居をスタートします。ただし、隠れ家や餌入れは頭数分以上用意し、いつでも逃げられる場所を確保してあげましょう。
ケンカのサインと対処法
同居後も、上下関係を確認するための小競り合いは起こります。軽いものであれば見守りますが、どちらか一方が怪我をしたり、常に怯えているような場合は、ストレスが溜まっているサインです。その際は、残念ですが再度ケージを分け、別々に飼育する決断が必要です。
ケンカの進行レベル
- レベル1(小競り合い): 唸る、お尻をぐいぐい押す、追い回す。→ 見守ります。
- レベル2(威嚇): 歯をカチカチ鳴らす(歯ぎしり)、体を大きく見せるために毛を逆立てる、口を開けて歯を見せる。→ 緊張が高まっています。注意深く観察。
- レベル3(攻撃): 噛みつき合い、血が出るほどの喧嘩。→ 直ちに引き離し、ケージを分けます。
コラム:他の動物との同居は可能?
基本的に捕食される側のモルモットと猫や犬といった他の動物との同居は、事故のリスクが非常に高いため推奨されません。
しかし、非常に稀なケースとして幼い頃から一緒に育ったなどの特殊な環境下で動物同士が互いを家族と認識し、平和に共存する例も存在します。実際に筆者の家ではモルモット、ウサギ、猫が仲良く暮らしていますがこれは獣医師からも『極めて珍しい例』と言われています。安易に真似はせず、動物の安全を最優先してください。
